
第4回で、私が高配当株を選ぶときにAIを使っていることを紹介した。ただ、最初からうまく使えていたわけではない。以前は、AIで売買のルールを作り、購入と売却のタイミングをすべてそのルールで決めていた時期があった。その結果、利確のタイミングで失敗している。今回は、その失敗と、AIの使い方をどう変えたのか、今は実際にどのような依頼をしているのかをまとめる。
AIで売買のルールを作った
配当を意識して株を買い始めたのは、2024年である。2025年もその方針を続けながら、決算を見て判断するなど、ほかの手法も試していた。
そして2026年1月、AIや統計を勉強してきたこともあり、「感情に左右されないルールを作れば、うまくいくのではないか」と考えた。そこで、AIを使って売買のルールを作り、そのルールで運用することにした。運用したのは、2026年1月から9月までの約9か月である。
ルールは次のとおりである。
- 購入価格から15%上がったら、1回目の売却(利確)
- そこからさらに10%上がるごとに、2回目、3回目と売却し、全部で3回に分けて売る
- 売却したあと、10%下がったら再購入する
AIに任せていたのは、購入と売却のタイミングである。株価がルールの条件に達したら、自分の考えは挟まずにそのとおり売買していた。
結果:取れたはずの利益を逃した
実際に運用してみると、思っていたようにはいかなかった。
自分の感覚では「ここは売りたい」と思うタイミングでも、ルールの条件に届いていなければ売れない。反対に「ここは買いたい」と思っても、ルールでは買えないことがあった。
その結果、取れたはずの利益を取れなかった。
似たことは、第2回の検証でも起きている。配当利回りが2.5%未満になったら機械的に利確するルールでは、2024〜2026年の上昇相場で売却が続き、その後の上昇に乗り遅れた(期間全体の平均でも、資金の約半分は現金だった。こちらは条件を満たす銘柄が少なかったことも影響している)。ルールで利確の水準を決めると、大きく上がる局面の利益を取り逃しやすい。
振り返ってみると、ルールに任せるより、自分の経験と勘で判断したほうが良かったと感じている。AIや統計を学んでいた私にとって、これは少し意外な結論だった。第3回で書いた「AIで株価を予測しようとして、成功率が低そうでやめた」経験と同じく、AIを使えば判断まで正しくなるわけではないと改めて感じた。
この振り返りの限界
「勘のほうが良かった」は、ルールで運用した結果を見たあとの感想である。同じ期間・同じ銘柄で、勘で売買した場合の成績を記録して比べたわけではない。運用期間は2026年1〜9月の約9か月と短く、たまたま上昇が続いた時期だった可能性もある。ルールそのものが悪かったのか、利確の幅(15%)の設定が上昇相場に合わなかったのかも、切り分けられていない。
AIは「確定させるもの」ではなく「調査ツール」に
この失敗を受けて、ルールでの運用はやめ、AIの使い方を変えた。今は、配当を中心にした戦略に戻している。
AIに判断を確定させるのではなく、判断の材料を集める調査ツールとして使うことにした。
| 以前 | 今 | |
|---|---|---|
| AIの役割 | 売買のタイミングを決める | 候補を探し、情報を集める |
| 最終判断 | AIのルールどおり | 自分で決める |
| 判断の根拠 | 決まった値上がり・値下がりの幅 | AIの調査結果、ネットの情報、株価のトレンド、自分の勘 |
今のAIへの依頼の例
今は、たとえば次のように依頼している。
配当利回り3.5%以上で、増配傾向、配当が長期間続いている企業を探索してください。株価が長期にわたって下落しているものは除く。
ポイントは、探索の条件を少し広めにしていることである。
第4回では、配当利回りは4%以上を目安にしていると書いた。ただ、AIに探してもらう段階では3.5%以上と幅を持たせている。候補を広く集めておき、その中から見込みのあるものを選ぶためである。
また、配当利回りが高くても、株価が長く下がり続けている企業は除いてもらっている。利回りが高く見えるのは、株価が下がった結果かもしれないからである。
候補が見つかったら、それぞれの企業について次の項目を調べてもらう(詳しくは第4回で紹介した)。
- 配当利回り
- 配当の継続性と、増配・減配の履歴
- 業績と財務
- 主要な業務
AIの調査結果を受け取ったあと
AIの調査結果は、そのまま購入の決め手にはしていない。AIの回答には、古い数字や事実と違う内容が混ざることがあるからである。
- 条件が良すぎる銘柄は、決算資料などで自分でも調べる
- ネットの情報や株価のトレンドを確認する
- 最後は自分の勘で決める
「最後は勘」というと頼りなく聞こえるかもしれない。ただ、これは何も調べずに決めるという意味ではない。AIで集めた情報と、ネットの情報や株価の動きを自分で確認したうえで、それまでの経験をもとに判断する、ということである。
ルールで売買していたときに逃した利益は、まさにこの「自分の判断」が入る余地がなかったことで生まれたものだった。
AIに任せることと、自分で決めること
今の使い分けをまとめると、次のようになる。
AIに任せること
- 条件に合う候補を広く探す
- 配当の推移、業績、財務、主要な業務を調べる
自分で決めること
- 調査結果に違和感がないかの確認
- 買うかどうか、いつ売るか
まとめ
- 以前は、AIで作ったルールで購入と売却のタイミングをすべて決めていた
- ルールでは売りたいときに売れず、買いたいときに買えず、取れたはずの利益を逃した
- ただし、勘で売買した場合と同じ条件で比べたわけではなく、期間も短い
- 今は、AIを判断を確定させるものではなく、調査ツールとして使っている
- 探索は配当利回り3.5%以上で広く行い、購入は4%を目安に自分で判断する
- 最終的な判断は、ネットの情報や株価のトレンドを確認したうえで、自分の経験と勘で決めている
AIはとても便利だが、私の場合は「何を調べるか」を任せるほうが、「どう決めるか」を任せるよりうまくいった。
次回は、AIがまとめた決算分析を、実際に決算短信で確かめた結果を紹介する。
本記事は過去データにもとづくシミュレーションと情報整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。AIの回答には誤りが含まれることがあります。