
連載の第3回からは、検証の前提になっている私自身の投資について書く。この回は、投資を始めたきっかけと、今の方針にたどり着くまでの経緯をまとめる。華々しい成功談ではなく、少額で損をしながら「自分に合ったやり方」を探してきた記録である。
研究の合間に楽しめる趣味として始めた
投資を始めたのは、2020年、大学院の修士1年のときである。研究が忙しく、まとまった趣味の時間が取れなかった。そこで、買ったあとは放置しながら楽しめる趣味として投資に興味を持った。
ちょうどNISAが注目を集め始めた時期でもあった。加えて、当時はAIや統計を勉強していたので、正直なところ「自分なら成功する」と思っていた。
最初の投資:4,000円が3,500円に
最初に使ったのは、1株から買えるLINE証券である(同社のサービスは2023年に終了し、口座は野村證券に移管された)。口座登録の特典で約4,000円分を受け取れたので、自己資金は入れず、その範囲で買えるものを探した。そのため、始めること自体への不安はほとんどなかった。
選んだのは楽天と任天堂である。理由は、有名企業で、アプリの画面に目立つ形で表示されていたから。今振り返ると、企業の中身を調べて選んだわけではなかった。
結果は、少しずつ損をして約3,500円になった。手数料などの仕組みをよく理解しないまま売買していたことも、当時は意識していなかった。
AIで株価を予測できないかと試したこともあるが、成功率が低そうだったので途中でやめた。勉強していた知識が、そのまま投資の成績につながるわけではないと実感した経験である。
このあと、LINE証券での購入はやめた。
楽天証券の積立NISAで仕切り直す
次に始めたのが、楽天証券での積立NISAである。最初はS&P500だけを積み立て、半年後からはオルカン(全世界株式)とS&P500を50%ずつにした。
積立は、最初に設定してしまえば基本的にやることがない。その手軽さは良かった一方で、趣味として始めた私には「最初に選んだあとは暇」だった。
手数料や投資の仕組みは、この頃から実際の取引、Kindleの本、ネット記事で少しずつ学んでいった。
個別株への挑戦と、大きく損をしたパターン
「自分で選んだら、うまくいくのか知りたい」。そう思って、個別株にも手を広げた。
2020年頃には、NVIDIAやAMDなどの米国株も買った。こちらは利益が出たものの、当時は5,000円ほどプラスになったら利確するというやり方をしていた。今思えば、売らずに持っておけばよかったと感じている。
一方で、損失が大きかったのは、ネットを参考にスクリーニングした、よく知らない企業だった。条件は次のようなものである。
- PERが低い
- ROEが高い
- IT関連
- 売上が毎年増えていて、直近は特に伸びている
数字だけを見ると魅力的な企業に見えた。しかし、条件で絞り込んだだけで、事業の中身はよく理解していなかった。指標が良いことと、自分がその企業を理解して持ち続けられることは別だと学んだ経験である。
高配当株がいちばん自分に合っていた
さまざまなものを買ってみて、損失が少なく、確度が高いと感じたのが高配当株だった。
一番大きいのは、株価が下がっても配当が入るので、気持ちが楽なことである。そのおかげで慌てて売らずに放置しやすく、気づいたら株価が上がっていたこともあった。「研究の合間に放置しながら楽しめる」という、投資を始めたときの目的にも合っていた。
ただし、これは私の体験にもとづく実感である。第2回では、高配当で減配のない10銘柄を持つ戦略を過去データで検証したが、下落には強かった一方で、年率リターンはTOPIXに届かなかった。自分に合うことと、成績が良いことは分けて考えている。
今の投資方針
現在は、次の方針で運用している。
積立投資(土台)
積立の配分は、次のように変えてきた。
- 最初:S&P500のみ
- 半年後:オルカン 50%、S&P500 50%
- 現在:オルカン 50%、日本株 25%、S&P500 25%
配分を変えてきたのは、アメリカの株式市場が停滞するリスクもあると感じるようになったからである。そこで、アメリカ以外の成長も取り込めるオルカンと、日本株の比率を増やした。
個別株
- 配当利回り4%前後で、増配傾向の銘柄を長く持つ
- 株主優待を目的に、長く持ち続ける銘柄もある
- 一部は「今後この分野が注目される」という自分なりの仮説をもとに持つ
積立で全体の土台を作りつつ、個別株では高配当株を中心に「自分で選ぶ楽しさ」を残す、という形に落ち着いている。
おわりに
振り返ると、最初の「自分なら成功する」という自信は何度も外れた。それでも、少額で試しながら失敗の原因を一つずつ知ったことで、自分の性格に合ったやり方が見えてきた。
次回は、高配当株を選ぶときに確認している項目と、購入を見送る条件を紹介する。
本記事は過去データにもとづくシミュレーションと情報整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。